
これまでで宇宙創成→インフレーション→ビックバンという過程をわりと詳細に理解してきました。
※あくまで物理学者ではない一般人が、という意味です。
しかし、肝心な点が抜けている事に気が付きました。インフレーション→ビックバンの中間です。
インフレーションの後に何故高温になったのか? という点です。
その辺りを深堀してみたいと思います。
FRW 背景でのインフラトン場の運動方程式

そしてスロー・ロール近似では

でした。なので

Vは極小値に向かいます。Vについて最小値の定義より

ポテンシャルを最小点のまわりでテイラー展開すると

式 (1) を微分すると

インフレーション終了直後の運動方程式は3H が小さくなってくるので

という調和振動子の方程式そのものです。ここで

インフレーション終了後に出てくるインフラトンの調和振動子が得られます。
そして肝心な点にはなりますが「場の量子論」では、「調和振動子を量子化すると「粒子」が定義される」ということで、場の量子化では、 を全ての点での調和振動子と考えるので自然に「粒子」が定義されます。量子化すると、

インフラトン場の調和振動は、場の量子論では「大量のインフラトン粒子があることと数学的に完全に同じ。
※場の量子論の一般論は不勉強なためここまでの理解で申し訳ないです。
ここまででインフレーション終了付近(ポテンシャルの底)でインフラトン場が大量のインフラトン粒子に転換することがわかりました。ただ、まだ粒子生成が起きただけです。
次にインフラトン粒子が他の場と相互作用すると考えられています。これはインフラトン粒子が普通の粒子と同じように崩壊すると考えるからです。
「インフラトン粒子はなぜ崩壊すると言えるのか?」
インフラトン粒子は、他の場と相互作用を持つ限り、普通の素粒子と同じく時間とともに崩壊する。つまり、相互作用があるから崩壊する。
逆に言えば、
相互作用が完全にゼロなら、インフラトンは崩壊せず、宇宙は再加熱されない。
崩壊というのは「自然に起きるもの」ではなく、相互作用があるから起きる。
ということで熱に転換(ビックバンへの移行)が起きるにはインフラトン粒子が普通の粒子と同じように崩壊したはずです。
インフラトン粒子はまったく崩壊しないということにでもになれば、
→ 子粒子が生成されない
→ 熱も生まれない(熱宇宙にならない)
→ 再加熱が起こらない
→ 宇宙は冷えたまま膨張
→ ビッグバンの熱い初期宇宙が実現しない
これは観測と完全に矛盾します。
現実の宇宙は:
- CMB が 3000K のプラズマから来ている
- 原子核合成(T~10^9 K)が起きている
- 初期宇宙は超高温だった
よって
宇宙はかつて“何らかのプロセスで”非常に高温にならなければならない
これは絶対に避けられない観測事実です。
量子場論では相互作用があるなら真空から対生成される。
これについてはかなり昔に勉強した覚えがあります。
https://cat-falcon.hatenablog.com/entry/16783763

真空から電子と光子が勝手に生成される。
※量子場論では、真空には常に「仮想的な粒子対のゆらぎ」が存在している。
外場や励起された場エネルギーからエネルギーを受け取ることで真空ゆらぎが電子や光子などの実粒子として生成されうる。
インフレーション後の宇宙は
の状態でしかし相互作用がある限り、Φ → χ + χ などのプロセスは 真空中でも起きる。はずです。こうして大量生成された粒子は散乱などの反応を起こします。これが熱へと転換します。
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注)
現時点で省略している(とりあえず認めてしまう)点があります。どのようにインフラトンが他の場と相互作用するか、具体的なラグランジアン、相互作用の強さ、崩壊チャネル(どの粒子を生成するか)など。
モデルによって大きく異なります。記事では「相互作用がある限り崩壊する」と書いていますが、これはあくまで「可能性の一つの仮定」であって、「必ずそうなる」とは限りません。
現代の宇宙論/高エネルギー理論では、インフレーション後の再加熱は 必ず必要 であり、「宇宙が現在見られるような高温・高密度の状態から始まった」ことを説明する重要なステップです。一方で、
-
再加熱の効率、
-
どのような粒子が生成されたか、
-
温度はどれくらいだったか、
-
その後の宇宙の進化への影響、
などは、モデル依存で研究が続いているようです。つまり、記事のような「インフラトン振動 → 崩壊 → 熱」という路線は有力な仮説のようですが、それが「正解」だ、とは言い切れないのが現状のようです。
つづく。。