ソリトン分裂に関して(3)

先日の続き。
数値発散した原因は
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の評価である事までは明らかだ。しかし、よく見てみると第2項はΔtが掛かっているので時間ステップの調整次第で大きくはならないし、第3項は分母がメッシュサイズの3乗でそれなりに大きくなってこの項が巨大化するのを抑えられる可能性はある。
もっとも最悪なのが第1項目である。とは言っても第3項目もHの値が悪ければそれほど良くも無いし、第2項目も無節操に時間ステップを小さく出来ないから問題が無いとは言えない。さて、第1項目は具体的には
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だが、実際にこの項は本質的に問題なのだ。ここは先日も書いた手抜きの部分だったのだ。どいう手抜きをしたのか?
それは計算効率優先で陽解法に拘った事にある。どいう事か?
それは問題の項にはこれから計算しようとしている部分が含まれている事にある。
つまり、
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もう少し明示的に書けば
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なので新しい値の計算は
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となっている。なので本来は陽解法では解けない。左辺の値を求める式が右辺なのにその右辺に左辺の値がつかわれるという形になっているのだ。こういった計算は陰解法と呼ばれる連立方程式を解くという大きな手間が掛かってくるという問題を含んでいる。
ではどうやって陽解法に仕立て上げたのか?
 
次のように計算している。
まず、分散項を省略した非線形波方程式で∂M/tを求める。次に分散項に現れる時間微分項をこの求めた、言ってみれば近似の∂M/tで置き換える。こうして分散項を含んだ形で陽解法が適用できるという理屈だ。そして最大の手抜きこそ「近似の∂M/tを利用する」という行為なのだ。しかし、「それでも良い」というそれ相応の根拠はある(あった?)。
それは基本的には分散項は小さな寄与しか無いから分散項を省略した非線形波方程式で∂M/tを求めても大きな違いは生じないだろう」という仮定なのだ。
 
そしてこの仮定はそれほど間違っていない気がするのだが、、、。
と、いうのも時間微分項をゼロにすると計算は発散せずきちっと終える事ができる。時間微分項をゼロにするというのは局所的には流量が定常(一定)だという仮定をしたのと同等だ。であるならばある程度時間ステップを細かくしていけばある一瞬の流量変化率を見ることになるから定常に近づくはずだ。しかしそのような様子は見られない。
時間ステップを細かくするにも限度がある。
そうなるとそもそも近似の∂M/tが間違っているのか?
それならば非線形長波の計算が破綻していたはずだ。
 
というわけで益々混迷を極めている。本当はそうではなくて手を抜こうとしている行為にあるのは分かっている。正常な解き方は陽解法ではなく陰解法なのだから。