Memo53 Feynman図(Feynman diagram)登場

先日まで大変な計算でしたがこの負担を劇的に軽減したのがFeynmanです。
(参考)第4話 Feynman Rureの生い立ち・ファインマン図登場
複雑で困難な計算を今日Feynman図とよばれる図を使った計算にしたわけです。この方法は当初は絶賛されるどころかBohrは激怒したといわれています。さて、実はこれまでの話でFeynman図の片鱗は見えて来ています。

Feynman図の構成は時空点を点で表して、
片側だけに点のある線 と 両端に点がある線 で描かれます。
先日計算したコンプトン散乱は、
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でした。これはFeynman図の計算では
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と計算されます。※これがどうして計算なのかはこれから見ていこうと思います。

図は必ず時間の方向(下から上か左から右に向かって)書くのが最初のルールです。そして反応箇所には●を描きます。●を頂点と言います。

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上の2図の違いは上が粒子が反応しに入ってくる「内向きの線」と下が粒子が反応で出て行く「外向きの線」を表しています。線の種類にも次のような規則があります。
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S行列のコンプトン散乱項がなぜFeynman図でそう描けるのかは実際はWickの定理で展開した(Wick縮約)直後を見れば直感的にその概観は読み取る事ができます。具体的に見てみるとコンプトン散乱項は次のように計算されましたね。
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縮約された部分はプロパゲータでした。つまり、
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これらと先程のFeynman図を合わせてしばらく眺めてみると、
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ちょうど両端に点がある線で描かれた部分がプロパゲータに対応させることが出来ます。そうすると、コンプトン散乱項のスピノル粒子(電子)と光子の場がどの線に対応しているかもよく分かりますね。一般に
両端に点がある線で描かれたプロパゲータを内線

片側だけに点のある線を外線
と呼びます。

現時点ではFeynman図の意味がS行列の計算過程の中にちゃんとあるという意味で決して無節操な図を描いている分けではないと言う事が分かりましたが例に挙げたようにコンプトン散乱項が、示したようなFeynman図になる、逆にある規則に従ってFeynman図を描けば必要なS行列の必要な項がどのように計算されるかは理解できません。

次回からどのような規則があるのか見て行きたいと思います。最終的にはFeynman図を描けば面倒な計算をすることなくS行列の必要な項が容易に得られる事を見てみたいと思います。