津波のシミュレーション(9)-計算仕様

簡単にまとめると以下の通り。
特に際立つ点はスタンダードなやり方を逸脱している点。それは格子系。
普通は数値振動(チェッカーボード不安定)が現れるレギュラー格子はまず使わないのに使っているという愚か(手抜き)な仕様にある
 
計算方法
地殻変動津波発生→伝播→(陸地・河川への)遡上までを一括計算
差分スキームはLeap-Frog 法 中心差分。
局所項、移流項は2次中心差分、その他の非線形項は4次精度の中心差分を使用。
計算格子=レギュラー格子
地殻変動(断層変位計算)は「Mansinha and Smylie(1971) / Okada [1985] の弾性理論で計算。
地球の丸み(コリオリ因子)はオプションによって考慮。
支配方程式はオプションで変更。
線形長波理論、非線形長波理論、非線形分散波理論(修正ブシネスク方程式(Madsen and Sorensen1992)を使用。
最低水深:Δh(ただし、0.00001以下の場合は0.00001として計算)
 
全水深が0.00001以下の値を分母にもつ移流項はゼロとする。
流量の大きさは水位の32倍を上限とし、遡上計算における陸地と海面境界では30倍を上限とする。(津波浸水想定の設定の手引きVer.2.00 p35
 
海域においては、地震後の海底地形を再現するため、断層モデルから算出される沈降量や隆起量を考慮することを基本とする。ただし、沈降量や隆起量を考慮しない陸域との不連続を作らないようにするため、必要に応じて陸域との境界で地形のスムージングを実施。
 
※「中心差分」。一般には風上差分が適用されるが非線形分散波を扱う場合はか中心差分の方が安定するという例に従った。「海岸工学論文集 45(1998)非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案 原信彦・岩瀬浩之・後藤智明」
 
※計算格子は一般には安定的な計算ができる「Staggered格子」が採用されるが処理が複雑で並列処理に向かないため使用していない。
実装が簡単なためレギュラー格子を採用。

陸地では完全反射
オプションで遡上をシミュレーションする
小谷の方法と東北大の今村先生の方法。
人口境界ではCrejan(1985)によるスポンジ領域で吸収
越流境界条件(防波堤、堤防等において、水位がその天端高を超えた場合)は考慮しない。潮位の影響は考慮しない。
 
遡上・浸水
津波先端部を含む遡上部分の挙動を直接計算