第7話 シュレーディンガーの猫


物理学的状態は観測されないとき、可能な状態の重ね合わせになる。
そして観測することで重ね合わせは瞬時に収束して一つの状態(観測した結果)になる。

シュレーディンガーは1935年にこの奇妙な解釈に対して一つのパラドクスを提案した。
これが今日シュレーディンガーの猫」と呼ばれるものです。

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放射性物質を丁度一時間後に1/2 の確率で1個の原子が崩壊して放射線を出すように調整する。
一時間後に1個の原子が崩壊する確率は1/2 のである。
※とりあえずこの条件は「そういう条件」だと思う事にしましょう。実際は原子の崩壊という現象そのものが量子力学的な状態で崩壊確率は1/2という重ねあわせになるように調整してあるという設定がミソである。

もし崩壊するとこの反応は放射線感知器が感知して電気に変換されそれは増幅器で増幅されて猛毒を発生させる。
これを箱の中に入れて密封する。これで箱の中は誰も観測できない状態となる。
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※この図では透けて見えていますが完全にブラックボックスという事です。外から絶対に観測できない、しないと言うのが条件設定である。

このとき箱の中の放射性物質の原子の状態は(観測していないので重ね合わせが起きて

Ψ原子の状態 = Ψ原子は崩壊してない + Ψ原子は崩壊した

となる。ここまでは良いとして、この状態は次のように連鎖する。

Ψ放射線感知器の状態 = Ψ感知してない + Ψ感知した

さらに、

Ψ猛毒入りのフラスコの状態 = Ψ猛毒を発生してない + Ψ猛毒を発生した

そこでシュレーディンガーはこの箱に猫を一匹同時に入れたらと考えた。そうすると箱の中では

Ψ猫の状態 = Ψ猫は生きている + Ψ猫は死んでいる

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という重ね合わせが起きる。

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※この図はただのイメージ。

ところが箱を開けて中を観測すると波束の収束が起きて

Ψ猫の状態 = Ψ猫は生きている

Ψ猫の状態 = Ψ猫は死んでいる

のどちらかになる。
注意を要するのは
半殺しとか重症、危篤といった状態では無いという点です。半殺しとか重症、危篤というのはあくまでも生きている状態だからです。
この点がしっくりしない時は 第6話 重ね合わせの状態ってどういう状態? をもう一度読んで見て下さい。

このような瞬時の収束をあくまでも認めるというのがコペンハーゲン解釈(Copenhagen interpretation)である。また、フォン・ノイマンは波束の収縮は人間の脳の中(意識)で起きているという仮説を立てている。同様にペンローズのように観測者の意識が量子力学的な状態変化と関係があるという解釈もある。
いずれにしてもこの観測問題今もって未解決である
ただし、重ね合わせは波動関数Ψが波として干渉するという点とそれは観測できないという点が重要なのでこの問題の解決は将来に任せましょう。

シュレーディンガーの猫
E. Schr¨odinger
Die gegenw¨artige Situation in der Quantenmechanik
(量子力学の現状)
Naturwissenschaften 23 (1935) 807, 823, 844.