第29話 量子暗号(前編)



縦偏光した光子と横偏光した光子の量子状態は
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と書けます。これは基底になっていますね。さて、アリスは偏光面が傾いた重ね合わせ状態を作ることも出来ます。
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ただし、これをボブがHかVで観測すると波束は収束して
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ボブはcos(θ)の二乗の確率でHを観測することになります。同様にVを観測する確率はsin(θ)の二乗になります。基底はHとVではなく別の取り方もできます。
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で、
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も一つの基底になっている。
ここで1ビット(0か1)の情報を基底との対応関係で作る事が出来ます。例えば
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と出来ます。
アリスとボブが同じ対応関係を使っている場合ビット情報は確実に伝わりますね。
しかし、アリスがHVをつかってボブがSTを使うと事情は変わります。例えばアリスがビット(0)を送って(つまり|H> を送信)してボブがSTで誤って測定すると。
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なのでボブはビット(0)(つまり|S> を)50%の確率でしか受け取れません。つまり50%は間違えます。そこでアリスはHVを使っている事をボブに知らせておく必要があります。この伝達には電話や無線、あるいはFax等の手段で伝えるしかありません。しかしこれはイブによる盗聴の可能性があります。一旦アリスがHVを使ったかを知られるとどんなビット列もイブには筒抜けになります。そこでアリスはビット毎にHVとSTを混ぜて使う事にします。しかしこれもどのビットでHVを使ってどのビットでSTを使ったかをボブに知らせておく必要があります。結局これもイブにビット毎に盗聴されてしまえば終わりです。
結局アリスはHVをつかったビットなのかSTを使ったビットなのかを誰にも知らせない事が最善です。
しかしこれで情報をボブに送れるのでしょうか?
次回はこの点について書いて見たいと思います。
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