第47話 量子ビットの間違い(量子誤り)訂正の方法・前編




量子ビットは環境による相互作用でノイズが入り誤ったビットになってしまう。これは環境による影響のためほぼ不可避です。この点については特に2ビットの制御NOT回路などが量子間相互作用をつかった回路なので環境に影響されやすいという事が entangled74 さんがコメントを寄せてくれています。以下では1qubitを如何に守るか(誤っても訂正できるか)を見てみる事にします。

1qubitは次の量子重ね合わせ状態でしたね。
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この量子ビットの間違い(量子誤り)訂正する装置を考えたとき、保護したいqubit の状態を知ることができない点に誤り訂正の難しさがあります。観測してしまうとこの量子状態は壊れてしまいます。つまり、ビットの状態が誤っているのか確認しようとするとこの量子ビットは壊れてしまいます。観測で状態が変化してしまい量子誤り訂正の意味が無くなってしまいます。


では量子ビットを複製保存しておいて、と思いますがこれは量子状態は複製できない第32話 量子複製不可能定理(No cloning theorem)ためこの方法も駄目です。このため
ショアがある方法を提案するまで量子状態を保護する誤り訂正は出来ない
と考えられていましたがShorSteane が個々に量子誤り訂正の方法を示して研究者を驚かせたのです。
P. W. Shor. Scheme for reducing decoherence in quantum computer memory.
Physical Review A,52(4):2493–2496, Oct. 1995.
A. M. Steane. Error correcting codes in quantum theory.
Physical Review Letters, 77(5):793–797, July 1996.



そのアイデアは保護ビットを追加するというアイデアです。
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に2ビット分余分にした量子状態を作ります。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231331.jpg
さらに
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と(符号化)します。この過程は次の量子回路を通せば作る事ができます。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231344.jpg
実際に計算して確認してみると、
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231348.jpg
となって
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231353.jpg
という状態になる事が判りますね。

例えば1qubitの誤りというのは
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231357.jpg
というユニタリ作用素を使って、例えば3ビット目をオリジナルと変えて
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804231401.jpg
となってしまった状態です。他のビットも同様です。

次回はどうやってこの3qubitに対する誤りを訂正するのかを具体的に見てみたいと思います。