Memo5 即席、相対性理論

Feynman図で遊ぶということは量子電磁気力学で遊ぶという事なので全くルール無しには遊べません。そこで今回は即席の相対性理論のお勉強です。

さて、相対性理論はとにかく話題の多い分野です。不思議な事に物理を専門にしている人以外にも人気のある理論でもあり擬似科学を含めてツッコミが入れられる、ある意味不幸な理論とも言えます。繰り返しにはなりますが擬似科学が物理学者を「相対性理論を信じる、信者」という言い方はかなりの誤解でしょう。いまだに検証実験が行われる等むしろ専門家でも「なにが合っても信じる」といった信者は居ないと思います。ちなみに他の理論もそうです。量子電磁気力学もどこかで破綻するのか見極めるための高次の計算(スーパーコンピュータが必須)に取り組まれているようです。

さて、物凄く荒っぽく言えば「物理学」はなんらかの「変換」に対しての法則が不変な形を保つ理論とも言えます。「変換」というのは見る立場を変えるという意味だと考えても良いと思います。つまり、見る立場で帳尻の合わない結果になるようなおかしな世界にはなっていないという考えです。こうした視点で見直してみるとニュートン力学は「ガリレイ変換」とよばれる変換に対して不変な理論という言い方も出来ます。
ガリレイ変換は(r, t) から異なる系(r',t')の変換でr=(x,y,z)で、tは時間、vは相対速度です。
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例えばニュートン力学の力Fはこの変換に対して不変です。ちょっとだけやってみると、
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従って、
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となってガリレイ変換の間ではどちらの系でも全く同じ結果になります。つまり力という物理量は速度vで動いている系で計っても同じ量になる事が言えます。

では相対性理論(正しくは特殊相対性理論)は、これも一言で言えばローレンツ変換(Lorentz transformation)に対して物理量が不変な事を要請する理論という事が出来ます。

それでローレンツ変換ですがそれは(t,x,y,z)から(t',x',y',z')の変換で
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が成り立つような変換です。(見た目はピタゴラスの定理に近いですね)ともかく
(t,x,y,z)の変換で上の式を満たす変換で不変な理論が相対性理論です。ニュートン力学では時間tはパラメータとして空間(x,y,z)とはある意味独立していましたが相対性理論では融合され、ローレンツ変換からも分かりますが単独なパラメータでは無くなっています。このような関係はエネルギーと運動量に対しても成立して
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今日、質量という量はこの不変量を使って
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と再定義されます。さて上の式は行列で書くとすっきりします。
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この行列gは「計量テンソル」と言います。
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ここで慣例に従ってx,y,zをインデックス(x1,x2,x3)と書いてtをx0と書くと
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と書けます。暗示的ですね。こうすると
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さらにgの対角成分以外はゼロなので
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と書けます。見苦しいのでΣを省略して書くと
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と書けます。相対性理論の教科書に書かれている式です。ここで
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と置いてみると
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となってピタゴラスの定理になります。2点間距離(長さ)は不変に保つお馴染みのユークリッド空間の性質でね。「計量」と呼ばれる所以です。ここまで書いてくると計量が
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である空間の距離を不変に保つ空間を考える事が出来ます。これをミンコフスキー(Minkowski)空間と言います。

さらに計量の対角成分以外はゼロでしたがそうでは無い一般の場合も考えられます。そういった一般の計量でも
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といった不変性の元で構成する理論も考えられます。その一つが一般相対性理論と呼ばれるものです。またこのような空間をリーマン空間とよびそれを扱う数学をリーマン幾何学と呼びます。

ミンコフスキー空間リーマン空間もそれぞれだけで一つの学問を形成するほどの奥深いもののようです。専門家以外は相当な数学的準備が必要なのでこ深入りするには覚悟が必要です。

※後日また書きますが添え字の付け方にもちょっとした便利なルールがあります。なのでここで書いた方法は後で改めて行きます。