Memo15 場の量子化の準備(1)(即席、超関数)

超関数という言葉自体は殆ど専門的に学んだ人たち以外には無縁(言い過ぎか?)なものでしょう。
[『ウィキペディア(Wikipedia)』]
を見てみれば納得しますね。つまり &%@!¥&%$%??? でしょう。

ところが超関数という言葉は使わないまでもデルタ関数なら使った事がると言うエンジニアもいると思います。私もそうなんですが使う分に大変便利です。しかも背景にデルタ関数があることすら知らずに使っている人もいるからある意味凄いです。実はそんなもの知らないというエンジニアも実は使ってたたりします。そもそもデルタ関数はそうやって、なんだか便利じゃないかという発想で使われていた経緯がある。

数学屋さんはどんな気持ちだったんでしょうかね?

それで、デルタ関数が数学としての地位を得るのに必要だった考えが「超関数」という意味付けなんですね。

ところが一旦こういった定義がなされると先程のWikipediaのような難解な土台を持ってしまいエンジニアの端くれが容易に近づけるような代物ではなくなってしまったんですね。
困った事です。そんな中で「今井 功」さんを初めとする物理学者や数学者がこういった難解になってしまった超関数を分かりやすくするための努力をされていたようです。
今井 功さんの本では「流体力学複素関数論」(だったかな?)を昔に積読した記憶があります。とてもイメージし易い内容でした。その後、やはり流体力学とうまく絡めて「超関数は流体中の渦層」だという直観的な理解というかイメージ化(初等化)をしていたんですね。もっとも流体中の渦層を知らないので残念ながら私はイメージ出来ませんが、、、

そんな中、超関数を使う側で考えた場合「場の量子論」中西襄 著 の(初等化された)説明がありますのでちょっと紹介します。(当然、厳密な定義では無いので色んな注意が必要になる点は避けられない事は覚えておく必要があります)
x=0で発散するなど関数として意味を失う場合でもε→+0 のような極限操作を他の計算の後に行うとすると普通のタチのよい関数(自由に微積分が行える)として扱える。
そしてそして解析関数の境界値やその一次結合
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のようなものを「超関数(hyperfunction)」と説明しています。
大雑把に言えば多変数でもこのような正則函数の実領域の境界値(抽象的境界値)の有限和として定義される。
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なので1変数の佐藤の超関数は複素正則関数の実領域への境界値として定義される。
つまり1変数の場合には上半平面と下半平面の2方向からの境界値という事になる。

特に1変数の場合、通常は上半平面と下半平面の2方向からの境界値の差として定義するようだ。ただ一般の多変数の事まで考えると上記の定義のように複素解析函数の実領域への境界値の有限和として与える方がイメージとしては近いようだ。そういう意味では「場の量子論」中西襄 著 で述べられている定義は的を得ているのだろう。

※多変数の場合は実軸に台を持つ正則関数の層を係数とするコホモロジーとして定式化される。
(私の理解を超えてます)

このような意味ででデルタ関数
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と定義される。
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これならシロートでも読めますね。(ただこれも一つの直観的な理解と思うべきでしょう)
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Schwartzの超関数(distribution)という定義もあって、このhyperfunctionはその拡張にもなっているそうです。hyperfunctionは佐藤超関数とも呼ばれます。

1変数の場合は上半平面(+iε)と下半平面(-iε)の境界値を考えるのみだったが、多変数の場合は状況はもっと複雑でになる。実軸に台を持つ正則関数の層を係数とするコホモロジーとして定式化。

、、、なので難しいって事ですね。「正則関数の層」とか「コホモロジー」とか、、、今の(将来も)私には理解不可能な領域だな。


ともかくタチのよい関数(自由に微積分が行える)として扱える。という点はちょっと補足しておきますと、普通の関数の意味で微分出来ないような滑らかでない関数でも微分出来るようなるという事です。もっともこれはあくまでも超関数としての微分なのである意味微分演算の拡張になっているんですね。

このようにある意味、微積分が自由になった点では使う側は便利ですが問題点というか大事な注意事項がある。それは同じ位置での超関数同士の積が定義されない。という点です。
つまり、
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が駄目だという事です。なので計算過程でこのような形式が現れないように注意しなければなりません。

いずれにしても初等化という意味ではこんな感じになるんでしょう。

なので高度な数学的背景があるんだな、と思う事にしましょう。
実際、場の量子論で正準交換関係による量子化では超関数になるのだけれど、こう書いてあります。
「超関数の積が定義できないので正準交換関係による量子化は数学的には厳密ではない」
えーー今更というか、続いて「厳密性にこだわると先に進めない」のでこの点には目をつぶる。
先達者がそう言ってくれるならそうさせてもらおう。
※まあ、なんで目をつぶっても良いのかという説明もるようですが。

捕捉
佐藤超関数(hyperfunction)
M. Sato, Theory of hyperfunctions I J. Fac. Sci. Univ. Tokyo, Sec. I,8(1)(1959) 139–193.

M. Sato, "Theory of hyperfunctions" SÛgaku , 10 (1958) pp. 1–27
M. Sato, "Theory of hyperfunctions I, II" J. Fac. Sci. Univ. Tokyo Sect. 1 , 8 (1959–1960) pp. 139–193; 387–437
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引用:http://eom.springer.de/H/h048420.htm