Note34 局所ゲージ変換

先日の続きです。ようやくゲージ変換に対する不変性の重要性が理解できた。個人的にはこの程度で十分納得である。今日はその点を。

前回、ゲージ変換の特徴が少し分かったが、このゲージ変換の考え方をもう一歩踏み込んで、前回の位相変換の不変性もまだ甘いというわけで位相θが時空の位置でふらふらと変わってもやっぱり基礎方程式は一つ(不変)であって欲しいと欲張ってみる。つまり局所的なゲージ変換
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を考える。その意味でこれを局所ゲージ変換と言って前記のゲージ変換を大局的ゲージ変換と言います。
今度はθが場所xの関数になっているからふらふらと変わる事になる。

ところがここまで意地悪な設定をすると例えばディラック(Dirac)方程式は不変性を維持できない。つまり(大雑把に)言い方を変えると時空の各点で方程式が色々と変わってしまう。これでは基礎を記述する方程式とは言えないぞ。というわけだ。

そこで、場を方程式の元、つまりラグランジアン密度に再度立ち返ってラグランジアン密度を局所ゲージ変換に不変なようにしておきたい。という事になる。
ディラック(Dirac)方程式のラグランジアン密度は「場の量子論 中西襄著」p75によれば
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これをU(1)局所ゲージ変換に対して不変にしたい。そのために考えられたのが
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という置き換えと局所ゲージ変換で場Aを仮定して次のように変換するのだ、という仮定
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を行う。

まず微分の置換でラグランジアン密度は次のようになる。
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これが局所ゲージ変換に対して不変になって
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と同じになる。実際に局所ゲージ変換してみるとちゃんと不変になっている。※1)

と言う事で局所ゲージ変換に対して不変であるべし、という厳しい要請を満足するようにラグランジアン密度を修正すると自動的に場Aが導入される。それでこの場Aというのは何か?というとラグランジアン密度に新たな質量に関する項が無いことからもAは質量=ゼロ(Massless)で、それは電磁場(光子)でなければならないだろう。と言うわけらしい。ただ、A場に質量を与えることもできるがその場合は局所ゲージ変換に対して不変にする事が出来ないらしい。さらに、元のラグランジアン密度は(相互作用の無い自由な場の方程式の源)
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だったがこの局所ゲージ変換に対して不変なラグランジアン密度は
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今度は電磁場を含んだ形になっている。

元々、相互作用の無い自由な場の方程式に相互作用を付加するにはラグランジアン密度に後付的(人為的)に相互作用項を生成するような仕掛けを入れて置かなければならなかったのだが局所ゲージ変換に対して不変であるべし、という厳しい要請を満足するようにしてみて、気が付いてみると相互作用項が付いてきたという旨い話しになっている。

つまり、局所ゲージ変換に対して不変であるべし、という厳しい要請は相互作用の形も決まってしまった、という何とも旨い話だったわけだ。



※1)ラグランジアン密度は局所ゲージ変換で本当に不変になっているかの確認。
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で確かに不変だ。