善良な市民と悪党

私の好きな作家、星新一さんの短編だ。
星新一さんの小説(ショートショート)はとても分かりやすく読みやすい。
私が少年の時一癖あるオチ、社会の問題を痛烈な皮肉で笑わせてくれたし考えさせられた。
その中でも「善良な市民と悪党」は傑作だと思う。どんな話か少し紹介しよう。

多くの作品があるのでこれを期に読んでみたくなってくれればと思う。

主人公はもちろん善良な市民だ。ある日強盗が押し入る。
強盗の目的は主人公の殺害。冷静な主人公は強盗にたずねる。
私はまじめで恨みを買う覚えも無いし、貧乏でお金なんて無い。どうして殺されるのか?
当然の疑問でしょうね。

しかし、強盗は「何が何でもお前を殺す。この日というチャンスを待っていた」という。

強盗も「申し訳ない」という気持ちはあるが「殺害する」という。そして強盗は
お前は賢いし本当に善良な市民だ」と褒めるのだが、、、
そして「どうして殺されなければならないのかを知りたい」と強盗に懇願する。

強盗はその理由を語り始める
俺は医者だった。その立場を利用して薬物を売買し大金を儲けた。
俺もバカではない警察が踏み込んだ時には現金をダイヤに替えていた。
しかもその時ある男の盲腸の手術中だった。

頭のいい善良な市民は自分の体内にそのダイヤが埋め込まれていたことを知る。
事実を知った善良な市民は取引を申し出る
この事は口外しないから殺さずに取り出してくれ」と。すると強盗は
残念だが善良な市民と悪党の間には信用取引は成立しないと言う。

しばらく言葉のやり取りが行われるが結果的に主人公は断念する。
殺しても良いよ」と。この潔さに悪党は疑念を抱く。
どうしてだ?

善良な市民は
やっと分かったからです。
ある日お金に困っていた時お尻が腫れて膿みが出たんですが
それ以外にも不思議な物が出てきました」「ダイヤでした
と語り始める。

大金を持った事が無かったからバカみたいに使いました。
今では借金だけ、だから死んでも良いと思いました」と語る。


強盗は「お前は善良な市民だがお金の使い方がバカだ」と言い。賢い使い方を説く。
そして強盗は「もう良い。俺もバカでは無い無駄な殺人はしない」と言って帰ろうとする。

しかし、善良な市民は「せめて責任を果たしたい、殺してくれ」と懇願する。
悪党は呆れて「じゃあ勝手に死ね」と言って持っていた拳銃を善良な市民に渡してその場を去ろうとするのだが、、、。

善良な市民は「とても良い話を聞きました
今度、信用できる病院で取り出してもらいます

えっ!?と思う強盗。賢いとほめられた善良な市民の作り話だったのだ。

強盗は「俺を殺すのか?」と尋ねると、
善良な市民は「はい。事実を知っているのは貴方だけだから

恐怖する強盗は取引を申し出る。「命を助けてくれたら、、、」と。

しかし、善良な市民は「善良な市民と悪党の間には信用取引は成立しないのでしょ?」と。


と言った感じです。どうです?このオチ。