Note92 異常磁気能率

この異常磁気能率の値は以前計算してみましたがこの時点ではただQEDの計算をしただけで(達成感だけで)満足していました。

ここ1週間ほど勉強してきたのはこれについての物理的な理解を得ようとするための準備というか予備知識の補習が目的でした。やっとここまで来たということです。

さて、電子を磁場の中に置くと小さな磁石のように振舞う。これが電子の磁気モーメントとして観測される。この大きさが磁気能率として表される。
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が電磁学や非相対論的な量子力学ではg=1だった。ところが観測からはg=2という結果を得ていたので説明の付かない現象の一つだったがディラックによって量子力学を相対論の要請に合う形に修正した相対論的な量子力学では見事にg=2を説明する事ができた。理論の勝利と言ってもよいと思います。
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これは何よりもディラックによってスピンが理論から自然に導かれたと言う点が大きかったのだろうと思いました。ところがP.Kushによって
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という測定結果が得られ(1947年、P. Kusch(1955Nobel 賞))た。再び理論とのズレが問題となる。このズレを異常磁気能率という。このズレは場の量子論QED)によって始めて理論的に正確に説明されるに至った。
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なにが根本的に違っていたのか?
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粒子の生成・消滅過程を考慮してはじめて説明できた現象だったという事になります。それでディラック方程式からg=2が説明できるというのが先日までの話でして、この2という値に補正が加わるわけでその補正が
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で、磁気異常能率(anomalous magnetic moment)の2次補正となります。

それで何でF2(0)を計算すると磁気異常能率の補正になるのか?というのが私の狙いでして、せっかくSchwingerが計算した結果と同じ結果を得たのだからこの理由も抑えておきたい。という訳です。
その点は次回に。