Note283 ハーディのパラドックス(5)

随分間があいてしまったけど前回までの一応の締めくくりです。
ハーディのパラドックスに関してとっても奇妙な話だと思うが計算を追ってみると量子論的には全く持って正常で奇妙な点は無いと思う。
注)私の理解がまともかどうかは分からないけど。
ただ、言えるのは煽ったように「奇怪で奇妙な現象」の如く「異常」な解説も氾濫している。その最たる例が「対消滅している(はずな)のに電子も陽電子も観測器に検出される」というパラドックスだろう。量子論はそんな事を一切予言していないので完全に誤った解釈だと思う。

少なくともこういった奇妙な解釈で大きく忘れているのは「重ね合わせ」の状態という量子論で出てくる概念だ。実際、先日までの計算を振り返ってみれば明らかなように「重ね合わせ」の状態で計算している。

つまり、そういった量子論特有の概念を忘れて(これを古典的という)古典的な解釈に無理やり持っていくと「対消滅しているはずの電子・陽電子が(D+、D-)で検出される可能性がある」という解釈になる。まさに「パラドックス」だ。
しかし、量子論的には驚くような事ではなく、しかもパラドックスでもなんでも無い。


さて、弱い測定だけど少なくとも通常の量子力学 (Conventional Quantum Mechanics)が主張する予測は完全に網羅していてさらに不可能であると考えられていた重ね合わせ状態の観測とも呼べる新たな概念を導入している。
これは端的に「観測すると壊れてしまう重ね合わせの状態」の測定 と呼ばれている。

こういうものはこれまでになかった新しい概念だだからきっと量子力学の新たな一面を浮き彫りにして、さらに興味深い世界を見せてくれるだろう。