第19話 反撃(2)


絡み合った状態にある2粒子系における不気味な相関、非局在性の存在を根拠にアインシュタインポドルスキー、ローゼンは1935に
量子論は正しいかもしれないけれども完全な理論ではない 」
A.Einstein, B.Podolsky and N.Rosen : "Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?" (Phys.Rev. 47(1935)777-)

という今日EPR論文とよばれる論文で反撃を開始した。
これは論文の著者の頭文字をとって現在EPRパラドックスと呼ばれるが実際には彼らはパラドックスであると述べていない。なので彼らがEPRパラドックスと言ったというのは間違いである。
しかしアインシュタインは、実際にはこの論文には不満があったと言われている。その理由の一つにポドルスキーによって単独で執筆されたためとも言われているがシュレーディンガーには「出来が今ひとつの論文だった、本質的な事柄が見えなくなってしまった」と愚痴っている。

このよう不気味な相関、非局在性に対する反撃に対していち早く反論したのは言うまでも無くボーアである。実際ボーアはEPRの論文がPhysical Review 5月15日号に掲載されると一月後には反論している。
その反面シュレーディンガー量子力学にとってかなり深刻な事だと受け止めている。

さらにアインシュタインはボーアの反論と多くの量子力学者らの反論があった事に対して更なる反論を行っている。つまり「それでもやはり量子論は完全ではない」と。

どちらにしてもこの非局所性に関しては多くの物理学者も不気味に感じていたようです。実際、別の視点からの検討で量子力学をある意味「常識的な」理論に修正する事が可能かどうかという検討が多くの人によって試みられている。

常識的な(正しくは古典的な)理解では実際には2粒子の物理的状態は測定前から決まっていたはずである。そのため実は量子力学が見落としているパラメータがあって、量子力学も測定前から決定している事を示すような形式にあるべきでは?と考える事もできる。そこでこのような測定結果を決定可能にするパラメータ「隠れた変数」があるのではという解釈が提案されたのだが...。