第32話 量子複製不可能定理(No cloning theorem)
量子状態の複製不可能定理(No cloning theorem)という「量子状態の複製は出来ない」定理があります。これによって量子暗号を盗聴しようとしたイブの目論見は失敗します。
a, bは勝手な(言い方を変えれば未知の)複素数とします。観測者はこの量子状態に関して物理系Aは無数の可能性を考慮する必要がありますね。このような量子状態の複製は可能なのでしょうか?。あらかじめ状態|ψ>と判っていればそれを複製する事は可能でしょうがこの時の複製操作を使って他の状態|φ>を複製できるでしょうか?つまり事前に用意しておく事が出来ない無数の可能な状態に対して複製操作は用意出来そうもありません。この問い答えたのはウッタース、ズーレックです。
The No-Cloning Theorem
W.K. Wooters and W. H.Zurak, Nature 299, 802 (1982)
D. Dicks, Pys. Rev. Lett. A92, 271 (1982)
a, bは勝手な(言い方を変えれば未知の)複素数とします。観測者はこの量子状態に関して物理系Aは無数の可能性を考慮する必要がありますね。このような量子状態の複製は可能なのでしょうか?。あらかじめ状態|ψ>と判っていればそれを複製する事は可能でしょうがこの時の複製操作を使って他の状態|φ>を複製できるでしょうか?つまり事前に用意しておく事が出来ない無数の可能な状態に対して複製操作は用意出来そうもありません。この問い答えたのはウッタース、ズーレックです。
The No-Cloning Theorem
W.K. Wooters and W. H.Zurak, Nature 299, 802 (1982)
D. Dicks, Pys. Rev. Lett. A92, 271 (1982)
ある二つの量子系A、Bにおいて量子系Aの量子状態を量子系Bにコピー(複製)出来ると言うのは式で書けば
というユニタリ変換が存在する事を意味します。ここで、基底の一部を
とするとき、複製
を考えます。この複製作用素Uを使ってある未知の状態
に対して、複製の定義から
が複製となります。つまり、
がこの状態の正しい複製となります。しかし、実際は
となっています。つまり、
で無ければなりません。しかし、
ですから、この事から用意しておいた複製作用素Uを使って一般にはこのような状態は複製は出来ないことがわかります。あるいは量子状態の複製を起こす状態変移は作れない(ユニタリ変換が存在しない)とも言えます。この定理は観測者が未知の量子状態に対して状態を保ったままコピーが出来ないことを保証しています。なので量子暗号の安全性を保証する重要な定理となっています。
というユニタリ変換が存在する事を意味します。ここで、基底の一部を
とするとき、複製
を考えます。この複製作用素Uを使ってある未知の状態
に対して、複製の定義から
が複製となります。つまり、
がこの状態の正しい複製となります。しかし、実際は
となっています。つまり、
で無ければなりません。しかし、
ですから、この事から用意しておいた複製作用素Uを使って一般にはこのような状態は複製は出来ないことがわかります。あるいは量子状態の複製を起こす状態変移は作れない(ユニタリ変換が存在しない)とも言えます。この定理は観測者が未知の量子状態に対して状態を保ったままコピーが出来ないことを保証しています。なので量子暗号の安全性を保証する重要な定理となっています。
量子状態の複製が出来ない事を示すのに内積がユニタリ変換で不変な事実を使って示す事も出来ます。
合成系の内積を求めてみます。
ですが、ユニタリ変換は内積を不変に保つので
となります。従って、
で無ければなりません。ここで、
第13話 量子力学の基本4(状態ベクトルの基本)
なので、
となり一般的には成立しません。なのでやはり複製は出来ないことがわかります。
合成系の内積を求めてみます。
ですが、ユニタリ変換は内積を不変に保つので
となります。従って、
で無ければなりません。ここで、
第13話 量子力学の基本4(状態ベクトルの基本)
なので、
となり一般的には成立しません。なのでやはり複製は出来ないことがわかります。
既知の2量子状態が直交関係なら複製できるが非直交なら原理的に出来ないとも言えます。