第34話 量子テレポーテーション(ベル測定)


アリスの手元にある状態を
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とします。次に量子絡み合い状態をアリスとボブに配布します。アリスがもらった状態を2、ボブがもらった状態を3と仮に番号を振っておきます。そうするとアリスとボブに配布した状態(2,3)(合成系)は、
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と書けます。ただアリスもボブも
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なのかは観測するまでは不明です。
※EPR現象[第18話 反撃(1)]
※[第13話 量子力学の基本4(状態ベクトルの基本)

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状態1と状態(2,3)をまとめてみた状態(合成系)は
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と書けます。これを少し計算すると(テンソル積の演算子記号は省略します。)
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ここで次の基底変換を考えます。これは後でアリスの立場で考えたいからです。
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アリスはこの基底を観測する事にします。この観測をベル測定(ベル合同測定)といいます。なのでアリスがベル測定を行う状況を見るには(1,2,3)合成系ををこの基底
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で表現する必要があります。ここで、
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と書けます。なので同様に考えると
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と変換できる事がわかります。これを(1,2,3)合成系の式に代入してこれを基底(式(2))でくくって行くと、
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となります。これでアリスが基底(式(2))状態(1,2)をベル測定した場合を見る事が出来ます。つまり基底(式(2))のどれかを観測します。そうするとEPR現象[第18話 反撃(1)]で見たように瞬時にボブ側の状態3にEPR現象による相関が関係してきます。このときボブが持っている状態は式(3)を見ると
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のどれか(確率は25%)になります。ただしボブはこれを観測して確認はできません。もしボブが自分がもらった状態3を観測してしまうと
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に収束してしまいます。これではテレポーテーションになりません。つまり、ボブのところでは
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という量子状態が来なければテレポーテーションしたことになりません。

次回はボブが観測することなくテレーポーテーションを完了する過程を見ていきます。


※補足
ベル測定

絡み合いの状態にある二粒子が独立しているならそれぞれ |0>、|1>。
2粒子の系としては次のような4つの状態が考えられる。

 |00>、|01>、|10>、|11>

この4つの状態ベクトルは2粒子の系の基底ベクトルとなっている。

そして絡み合いの状態ではこの基底ベクトルから構成される「ベル状態」と呼ばれる

 |Φ+> = 1/√2( |00>+|11> )
 |Φ-> = 1/√2( |00>-|11> )
 |Ψ+> = 1/√2( |01>+|10> )
 |Ψ-> = 1/√2( |01>-|11> )

で記述するのが一般的である。
2粒子の系がベル状態のいずれにあるかを調べる量子測定をベル測定と呼ぶ。