第35話 量子テレポーテーション(転送)



前回見たようにボブが手元にある状態を観測してしまうと量子状態は壊れて転送は失敗です。ただ、状態は4つの可能性がありますがアリスが観測(ベル測定)したときどの状態を観測したか結果を知らせてもらえばこの問題は解決できます。

この連絡には古典チャンネル(確定的な情報、重ね合わせ状態を送らないチャンネル)を使う必要があります。簡単に言えば電話やFAX等です。量子チャンネルは量子状態を送る事が出来るので結果は確率的になります。簡単に言えば重ね合わせ状態を送るチャンネルです。

さて、アリスは状態(1,2)を基底
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のどれかを観測しています。
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から、
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という対応関係がわかります。なのでアリスからどの基底を観測したかを教えてもらえばボブは手元にある(4通りの可能性がある)状態に対して次のユニタリ作用素を使用してユニタリ変換を行います。
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ここで重要な点はボブが判っているのはアリスが送ってきた観測した基底とそれから判る次のユニタリ変換の方法だけです。つまり次の規則のどれかを行う事だけです。
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これを行うと、
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となってボブの持っている状態にアリスに教えてもらった状態に応じたユニタリ変換を行なえば
(観測することなく)
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に遷移させることが出来ます。この式を見るとアリスが持っていた状態がボブのところで発現してる事が判ります。
これでようやくテレポーテーションが完了します。
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しかし、残念な事にアリスの観測行為によって元のアリスが持っていた状態
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は(基底(2))
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のどれかなので(この式からわかるように)αもβも無くなっています。これはつまり
アリスが持っていた状態はアリスの手元から消えてボブの手元に出現
した事になります。テレーポーテーションと呼ばれる意味がわかりますね。
ここでも量子複製禁止定理が効いています。




余談:SF
SFとしてこの原理を使ったら?
仮に人間を素粒子レベルで完全な転送した場合、転送元の人間は送信元に出現する事になるが転送元の人間は全情報が転送されてしまうので死を覚悟しないといけないかもしれません。転送が完了した時そこには全ての量子状態が壊れた不気味なあなたの死体が転がり血の気も引く光景かも知れません。転送先ではそんな騒ぎをよそにあなたは…