小景異情

イメージ 1

         
         ふるさとは遠きにありて思ふもの

         そして悲しくうたふもの

         よしや

         うらぶれて 異土の乞食となるとても

         帰るところにあるまじや

         ひとり都のゆふぐれに

         ふるさとおもひ涙ぐむ

         そのこころもて

         遠きみやこにかへらばや

       遠きみやこにかへらばや


金沢の詩人、室生犀星(むろうさいせい)の詩です。有名ですね。
最初のフレーズ「ふるさとは遠きにありて思ふもの」はよく知られていますが全部はどうなんでしょうか?
私はこの詩はとても好きなので。とても意味深な詩だと思っています。それこそ人それぞれに当てはまると思います。

よしや
うらぶれて 異土の乞食となるとても

というのは、「たとえ異国の地で乞食になっても」という力強い決意と意思を表現なのだと思います。

帰るところにあるまじや

はちょうど自分のふるさとにかけていて「たとえ異国の地で乞食になってもふるさとには帰れない、帰らない」とい心情だと思います。

しかし、後半では心の弱みをあえて抑えず「帰りたい、ふるさとに帰りたい」と思って涙ぐむ心情がこの詩を読むものを引き付けます。


例えば、異国の地や遠方に両親または家族を残して単身赴任、長期出張等で何かを成し得ずには、のこのことは帰らないという決意をもっていてもふるさとへの思いは、、、

あるいは、失恋して旅に出た。街を出た。もうあの街には帰らない。でもあの街には両親や友人が居る。でも、もうあの街には帰らない。しかし心のどこかで帰りたいと思いながら涙ぐむ。

そんな心情でしょうか。


室生犀星の詩集「抒情小曲集」の中の作品「小景異情(その二)」
もちろん「犀」は室生犀星のふるさと金沢に流れる犀川からとっているのだろうと思います。