Note256 不定計量のヒルベルト空間

場の量子論では状態ベクトルの生息している空間はヒルベルト空間であるとされている。というか数学で言うならば「公理」としていると考えても良いだろう。
さらに確率解釈に抵触しないためには
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とされる。これを正定値性と呼んでいる。それと厄介なのはこの内積のことをノルムと呼んでいるからややこしい。なんでだろう?

そもそも量子力学の解釈を引きずっているのだがS行列のユニタリ性はこの正定値性があるからといっても過言ではない。

さて、ヒルベルト空間ってなんだ?という事だが正確な定義とかその辺をまじめに把握したことが無い(いまさらだけど。。。)感覚的につかっていた。所詮シロートはそんなものなのです。というか数学がうまく出来ている事もある。普通に計算していても問題ないようにうまく定義されているのがヒルベルト空間であえて言えば
無限次元線形空間の事で一般にはノルムは正にも負にもゼロにもなるのが

不定計量のヒルベルト空間(indefinite metric Hilbert space)という事になる。


これを見ると分かるがノルムと内積は異なるものだ。もう少し言えば内積が定義できても必ずしもノルムが定義出来るとは限らない。一方、物理では内積の事をノルムと呼んでいるからややこしいのだ。それで完備であるという条件が整っていなければならない。

結局、こうしているとどんどん目的からずれていく。
物理学者の数学者に対する苦情はたった一つの事を知りたいのに10の事を勉強させられた
「数学から物理へ」竹内外史(著)

そうなのだがやっぱりこういう勉強は不良だろうなと思っていたがEMANの物理学の「ヒルベルト空間」を読んでいると、、、。

『完備』とは
「ベクトルが連続であることを定義しているのである。 この性質は微分などを定義するためには是非とも必要なものだ。 そして、それはもっと分かりやすく言えば、このベクトルの要素は実数か複素数の範囲でなければならないという意味である。 初めからそう言えよ、って? 私もそう思う。」
引用:EMANの物理学の「ヒルベルト空間」

私もそう思う。

さらに
「結局、ぶっちゃけて言えば、「取り敢えずの計算に困らないベクトル空間」というくらいの意味だったということだ。」
引用:EMANの物理学の「ヒルベルト空間」


なんか冒頭に書いたことに罪を感じていたがスカッとするのは多分私がシロートだからなんだろう。

さて、場の量子論では縮退した状態ベクトルは無視しても問題ないので普通にヒルベルト空間と言ったときはこういった縮退を含まないヒルベルト空間を指している事が少なくないようだ。

状態ベクトルcに対して任意の状態ベクトル
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となるような時、縮退しているという。

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とするとき、その定義から
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となるbが必ず存在するはずです。そうすると
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で、結局、複素数λの選び方で正にでも負にでも成りえる。負ノルムの状態ベクトル量子論の確率解釈を打ち砕いてしまう。しかしこういったゼロ・ノルムの状態ベクトルは一見無害とおも思えるがゼロ・ノルムの状態ベクトルが存在することもまた確率解釈を打ち砕いてしまう要因をはらんでいる事もまた確かなようだ。