元素115と反重力リアクター

1989年5月、ラスベガスのChannel8で一人の科学者がある事を暴露した。

チャンネル8(Channel8 Communication System,inc)は
2002年3月に米国ラスベガスに本社を置く形で設立。沖縄に支店を構え、映像配信システムの開発を進めてきた企業。(wikiによる)

その科学者とはRobert Lazarさんである。
彼は国立ロスアラモス研究所に就職し陽子セクション加速装置の研究開発に携わった後、1982年、同研究所でのパーティーで物理学者エドワード・テラーと出会う。そして、「EG&G社と契約し、エリア51で兵器開発のスタッフにならないか」と誘いを受けてEG&G社と契約。

EG&G社って?

調べてみると国防契約社。つまり兵器開発等をやってるかなり機密に包まれた会社で実在する会社だと分かった。しかも度々UFOネタで出てくる極秘施設エリア51と密接な関係があるらしい。なのでガセネタなら詳細な本物志向の設定で凝っている。良い感じである。もしかすると本ネタかも?と思いつつ。

と、ここまでは才能を買われた若者がEG&G社に引き抜かれたというだけの話だが、問題はEG&G社が彼に与えた仕事内容にある。それは、エリア51内のS-4というセクションで元素115(原子番号115)を研究調査するという内容だったという。そしてその研究の目的は未知の飛行物体の推進装置の解明である。Robert Lazarは実際にこの未知の飛行物体を施設内で目にしておりそれが世に言うUFOだったというのだ。彼によるとその推進装置は重力と密接な関係のある装置で反物質反応炉による反重力リアクターという未知の推進装置だったと言う。

そしてその駆動エネルギー源が元素115だったというのだ。

ここでまず彼の経歴だが調べようも無いので何とも言えない。もっともこんなのはその気になれば直ぐに分かるのでバカじゃない限りウソを言っていないだろう。(と考えて)

しかし、「反物質反応炉による反重力リアクター」なるものは客観的に確認のしようがないが元素115ならある程度は調べられる。

さて、元素115だがウソをつくなら、バカな科学者で無い限り周到に調べたに違いない。
というのも原子番号が分かれば中高生でも(コツを知れば)ある程度はその物質の化学的性質は容易に類推できてしまう。

ここではその検証を実際にやってみよう!!。

そんなに簡単なのか?と思いの方のためにそのコツ(と言うほどでもないが)をちょっと実演を兼ねてやってみるのだ。化学の復習だ。

元素の化学的性質は主に電子の数(電子配置・エネルギーレベル)で決まる。さらにその電子数はイオン化していなければ陽子数、つまり原子番号に等しい。
ここで次のような表を覚えておくと良い(数値の規則は見ての通りこれをフントの規則という)
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/c/cat_falcon/20190804/20190804230459.jpg
※主量子数nに対して方位量子数はn通りが存在する。
この表の順序がエネルギーの低い順となっている。
方位量子数0はs 方位量子数1はp 方位量子数2はd 方位量子数3はf、それ以降はg,h,..という記号をつかう。

この規則は簡単なのでその気になれば暗記できるだろう。
これは原子の電子配置が簡単に算出できる表なのだ。電子はパウリの排他原理とフントの規則等によって
表に示したようになるべくエネルギー順位が下がるように位置を占めていくのである。
また、パウリの排他原理等から方位量子数Lに対して電子は2(2L+1)個が順に配置される。
つまり、sなら2個、pなら6個、dなら10個、fなら14個の電子が配置可能である。

なので最初の原子番号1(水素)では主量子数1の方位量子数0に1個配置される事になる。
L=0なので電子数は2(2*0+1) = 2個までゆるされる。なので原子番号2(ヘリウム)ではやはり主量子数1の方位量子数0に次の1個が配置される。

ここで量子力学で使われる記号を使おう。
方位量子数0はs 方位量子数1はp 方位量子数2はd 方位量子数3はf、それ以降はg,h,..なので、
表記は主量子数を頭にして
原子番号1の水素は 1s1
原子番号2のヘリウムは 1s2 と書く。

さて、表から次の原子番号3のリチウムは1s2 2s1に配置される事になる。

さて、元素の化学的性質は方位量子数が満タンが最も化学的に安定する。つまり化学反応しにくいという性質がある。この方位量子数が満タンの時を「閉殻」と呼ぶ。
逆に閉殻の一歩手前の状態、例えば原子番号3のリチウムでは閉殻には電子1個が余分だし、原子番号17の塩素は閉殻には電子1個が足りない。こういった場合1個の電子を誰かに上げるとかもらうとかいった言わば化学反応するほうが安定になる。つまり、閉殻状態に近い電子配置の元素は極めて化学反応性が高い事がわかる。

長々と書いたがこれが実は元素の周期表の科学的な意味である。
つまり、周期表の縦をみるとそれは元素の化学的性質が良く似た物質がならぶことになる。

さて、問題の元素115だがRobert Lazarさんがちくった1989年当時は未発見も未発見で地球には存在しない物質である。これは現在も同様である。ただし2004年2月2日、ロシアのドブナ原子核共同研究所(JINR)とアメリカ合衆国のローレンスリバモア国立研究所の共同研究チームが、加速器によって生成に成功したと発表してはいるが。

しかし、この物質の化学的性質の推定は私たちでも簡単に推定できる。元素115なのでその電子配置はさっき説明した方法で埋めていくと、

1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s2 4p6 4d10 5s2 5p6 4f14 5d10 6s2 6p6 5f14 6d10 7s2 7p3

となる。最後の7p3を見ると閉殻には3個の電子が足りないが窒素と同列なので化学的には比較的安定な物質であると思われるが原子番号が上がると同列のリンのように激しい酸化反応をしめすことから空気中での加熱により容易に酸化されるかも知れない。
実際、窒素は1s2 2s2 2p3なのでp軌道は元素115と同じ3個の電子が配置された状態で安定している。また同じ列の直ぐ上のビスマス原子番号 83)は電子配置
1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s2 4p6 4d10 5s2 5p6 4f14 5d10 6s2 6p3
もp軌道は元素115と同じ3個の電子が配置された状態なので物性も近いだろう。

ビスマスは淡い赤みがかった銀白色の金属(正確には金属と非金属の中間)の固体で脆い。そのために電気伝導性や熱伝導性は金属ほど良くない。またビスマスの両隣の元素は鉛と(最近有名になった)ポロニウムである。なので元素115も毒性があると思われる

まとめると
元素115はおそらく(と念を押しておくが)
何らかの銀白色の金属に近い硬くて脆い物質で、空気中では容易に酸化反応するかもしれない。
また、電気伝導性や熱伝導性は金属ほど良くない。さらに毒性のある物質。
推測される

これ、おそらく科学者の推定と大きくはズレていないと思います(多分)。

さらに、原子番号が上がると(90番台以降)は原子核が不安定で自発的に崩壊してゆく自発核分裂性が高くなる。元素103のローレンシウムでは半減期が長くて3.6時間である。上記の研究チームの発表では元素115は約90ミリ秒だったそうだ。ただしこれは半減期ではなく存在した時間らしい。つまりあっという間に崩壊してしまったという事らしい。しかし、元素115の同位体の中には長期にわたって安定するものが無いとは言えないだろうが期待はかなり薄いと思われる。

ましてやRobert Lazarさんが言うようにその金属片を目にする事は無いように思える。

注:ここでやったコツはいつも当てはまるとは限らないケースもある。
例えば、ニッケルの電子配置は1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d8 4s2
なので規則通りだとその次の銅は優先順位からいってニッケルが3d に電子8個が配置されているのでまだ2個の余裕がある。(dには10個入れる)そのため 3d8 は銅では 3d9 となって
1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d9 4s2 となるはずだが実際は
1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s1 となってd軌道に最初に入っていた4sの電子も移動して 3d10 となってしまっている。このような例外が幾つかの元素では起きている点には注意して欲しい。
この辺の詳しいエネルギー順位の決定は量子力学による精密な計算が必要になる。
ちなみに銅では3dを閉殻にするほうがエネルギー順位が下がるからだという説明が一応は出来る。