第14話 ψと確率と期待値の関係


■マックス・ボルンによる確率解釈
改めて書いてみると
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でした。ボルンがどう考えていたのかは分かりませんがともかくボルンは
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が状態|Ψ>を観測Qしたときの状態 |ψi> を観測する確率であるという仮説を行いました、これを「マックス・ボルンによる確率解釈」といいます。これは実験等からも実証されているようなので正しい解釈だとされます。

量子力学では状態 |ψi> を観測Qを行うと観測値 qi を得る確率が
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である事しか判らないという事です。

ここで重ね合わせの状態にある Ψ で観測によって ψi 状態を観測する確率は次のように求める事が出来ます。(これは ψ が ψi に波束収束する確率といっても良いと思います。)
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なので、
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がψi 状態を観測する確率として得られます。


メモ
恒等演算子
ここで、
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を考えると。
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となる事から U は恒等演算子と見なせます。つまり掛け算で言う1を掛けるような演算子です。
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■観測の期待値(平均値)
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期待値 = Σ(確率x測定値) であることから
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が観測Qで得られる測定値の期待値(平均値)となります。これを <Q> と書きます。
観測Qに対して Q|ψ> = q|ψ> ならQの観測値はq として得られますが重ね合わせの状態では 
Q|ψ> = q|ψ> のようにはなりません。しかし、期待値(平均値)であればどんな ψ であっても任意の観測Qに対して得られます。このように期待値(平均値)の算出は ψ や Q に対して安心して行えます。なので物理量の計算ではむしろ <ψ|Q|ψ> が重要だったりするようです。


メモ
密度演算子
量子力学の本ではこの密度演算子を中心に書かれているものもあるのでその辺の絡みをちょっとメモしておく。
量子力学にはハイゼンベルグ流の行列力学と呼ばれる体系もあって当時は行列という数学文化を積極的に取り入れた物理が無かったために敬遠されがちだったようです。しかし密度演算子(密度行列)を観測(物理量)Qに作用させた結果の対角成分がその期待値(平均値)に成るといったようにスッキリできるようです。ちなみにシュレーディンガーらが構築していった量子力学とこの行列力学は全く等価であることは後にシュレーディンガーが明らかにしています。

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一般に量子力学の系が密度行列と呼ばれる ρ で表される状態にある時、演算子Qに対応する物理量の観測を行えば、その期待値 <Q> は、
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と書けます。

これは適当な基底 φk を用意して
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に注意すると
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密度演算子
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とするなら、
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とちゃんとそうなっています。行列成分では対角成分の和(Trace)に相当するのでこれを
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と書きます。なので
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とかける事になります。

また、余談ですが
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から
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といった書き方も出来ます。

メモ
射影作算子

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に対して特定の状態を観測する場合次のような射影作用素を作用させる事がそのような観測に対応する。
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実際ψk だけ取り出してみると
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