第17話 神はサイコロを振らない


量子力学は本当に正しい理論なのか

量子力学の基礎方程式としてシュレーディンガーが示した方程式の解は複素数と成る事が分かったが粒子の位置やそのほかの物理量は一般には測定不可能な事になってしまった。しかしボルンがψに対して|ψ|^2が物理量の観測確率をあたえるという「確率解釈」を提唱し、その正しさは実験等を通して益々増していた。しかし、このような確率的にしか分からないような理論は「理論」として正しいのか?アインシュタインは「自然」、しいてはそれを説明する物理理論にこのような不確かなものを前提とした量子力学」の考え方を、ひどく嫌ったと言われる。

マックス・ボルン宛の1926年12月4日付のアインシュタインの手紙が残っている。
「親愛なるボルン。量子力学は大変尊敬できます。しかし、私の内なる声は、その理論はまだ完全な本物ではないと私に言っております。量子力学は多くの有益な結果をもたらしますが、われわれを神秘にほとんど近づけてくれません。いずれにしても、私は「神はサイコロを振らない」という確信を持っています。」
また、
「間違ってるとは思いません。しかし、不十分なのです」
とも言っている。

1930年、ベルギーのブリュッセルで開かれた第6回ソルベイ会議(The Solvay Conferences on Physics)
でこの問題は大きく取り上げられる事になる。
The Solvay Conferences on Physics、ソルベイ会議)
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写真:Science & Society より
討論の口火を切ったのは、アインシュタインだったと言われています。
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そこでアインシュタインは、
量子力学の不完全性を証明する決定的な証拠を提出したのです。
それは時間とエネルギーに関する不確定性原理に対して実際は不確定性がないことを示すアインシュタインの巧妙な思考実験でした。

この決定的ともいえるアインシュタインの証拠にたいしてボーアは殆ど反論する事ができなかったらしい実際
ボーアは
「もし、アインシュタインが正しければ、物理学は、もうおしまいだ。」
と漏らした言われる。
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しかし、ボーアは一晩かけてついにその反論を見つけ翌朝、
アインシュタイン博士の重大な誤りを私は見つけました。」
と切り出しアインシュタインの間違いを示しこの論争に勝利している。皮肉にもアインシュタインは一般相対論の効果を無視していたためこの点をボーアに突かれたのだった。

この後アインシュタインはどうしたのか?この論争はこれで決着したわけではなかったのである。
アインシュタインはさらなる武装を淡々とすすめていたのである。