Memo3 Feynman Ruleの生い立ち・量子電磁力学の特効薬探し

重大な疾病を負った量子電磁力学を治療するための処置はないのだろうか?
Vicar F. Weisskopfが(renormalization)「繰り込み」という処方箋を提案してた。しかし彼の方法は難しくとても実施できるとは思えない方法だったらしい。

その一方、無限大に発散する量を計算するような問題は当時の実験では見出せない効果の計算過程でしか出てこないため実用面では当面は問題ないとする向きもあったようです。しかし技術の発展はそのような悠長な態度を許すほど甘くは無かったようです。水素原子のスペクトル微細構造がこれまで知られている値とは異なるのでは無いか?といった結果が出始めていた。この微細構造の計算ではまさしく量子電磁力学によって電子の自己相互作用を考慮した計算が必要だった。そしてWillis Eugene Lambが今日Lamb shift(ラムシフト)とよばれる微細なずれを正確に測定する事に成功した。

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Lambはこの成果でノーベル賞を受賞しました。その反面、無限大の発散は放置できない重要な問題となってしまった。

1947年夏、ニューヨーク州ロング・アイランド沖のシェルター島にこの問題を治療すべく最高頭脳が結集した。そこでWeisskopfが提案していた「繰り込み」処方箋に一つの期待が寄せられたのだが問題は本当に特効薬になるのか?と、この難しい技法をどうやって実現すべきなのが議論される事になった。

凄いのはHans Betheはシェルター島からの帰途、特効薬になるのかの計算を近似的ではあったものの列車の中でやったという。そして驚くべき事にこの計算結果はラムシフトの90%以上を正確に説明できていたというのだから凄いというほか無いだろう。つまり特効薬の可能性が増したのだった。そして注目は「では近似無しにやったらどうなんだろうか?」という点だったに違いない。とても難しい計算だったが優秀な物理学者がこぞって計算を開始した。その中にはWeisskopfもいた。Richard Phillips FeynmanJulian Seymour Schwingerも計算を始めていた。

まったく「恐るべし」といった所でしょうか。後にFeynman、Schwingerそしてもう一人がこの成果でノーベル賞をもらう事になるのですがこの当たりの彼の努力が結実していく様子は次回に見てみたいと思います。