Memo2 Feynman Rureの生い立ち・量子電磁力学の重症(困難)

今日、量子電磁気力学とよばれる分野の基礎となる理論はディラックが作った相対論的量子力学とよばれる理論でこれを基点として様々な工夫(電磁場の量子化等)で量子電磁力学という体系がほぼ1930年までには出来ていたようです。電磁相互作用(光子との相互作用)が扱える点でそれまで出来なかった現実的な原子や素粒子の計算が可能になったという点でも理論に対する物理学者の視線も熱かったのだろうと思う。しかし残念な事にJ.Robert Oppenheimerによって問題点も指摘されていた。

電子の自己相互作用を計算することは電子のエネルギーを計算する事と等価だったのだがOppenheimerは電子の自己相互作用の計算が無限大に発散してしまう事を見つけていた。

しかし。量子電磁気力学の成功を見ていた物理学者はそれはどこかで計算を間違えたんだろうと思っていた。ところがまもなくWolfgang Ernst PauliWerner Karl HeisenbergがやはりOppenheimerが正しいという見解を示していた。PauliとHeisenbergは量子力学の創設に大きな貢献をした物理学者ですが、この問題の計算が無限大に発散するといった事態は実用面という意味では楽観的に考えられていたようです。

ところが他の計算でもどうやら計算が無限大に発散する事がわかってくるとただ事では無いと気がつくのである。どこまで信頼した結果を出せる理論なのか不安が残ったはずです。ところが1936年にはどうやら発散するケースはこれらの限られた量
・真空偏極(vacuum polarization)
・自己エネルギー(self energy)
・頂点補正(vertex correction)
と呼ばれる量だけで起きる事が分り量子電磁気力学の崩壊が辛うじて免れたのだった。

しかし、重大な疾病を負った量子電磁気力学はどうなるのだろうか?次回は治療に動き出した物理学者達を見てみたいと思います。


参考)「超への挑戦」 丸善

「超への挑戦」は一読の価値があると思います。以前NHKで「プロジェクトX」というのをやっていましたがそれの物理版とも言えます。物理学の本ですがメインはノンフィクション・ヒューマンドラマです。「Feynman Rureの生い立ち」を書く上で大変参考にしています。もっと詳しく知りたい方は是非一読してください。