Note270 弱い測定「重ね合わせ状態の観測も出来る?」(雑感2)

Aharonov-Albert-Vaidman (1988) らが提案している「弱い測定」も基本的には先日のような事なのだろうがアハラノフらは未来に時間発展するシュレーディンガー方程式と過去に時間発展するシュレーディンガー方程式のペアよって弱い測定を提案している。

アハラノフらはこうした二つの測定過程を組み合わせることで平均値(もう少し正確に言えばある種の量子集団の期待値)で、前述(先日書いた)の「特徴量」と書いたものである弱値 (weak value)を得る手続きの事を「弱い測定」として定義している。

そして「異端」と呼ばれるのはこの弱値が(対応する作用素の測定値として)期待される範囲を逸脱する値を取り得るからだろう。ただこの異常な結果も近年実験的にも確認されている。それでこの弱値を取り出すための測定として近年注目されているのだろう。
とにかくセンセーショナルな結果だけが踊っていて正確な事が分からなくなるのは残念だ。

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ただ、弱い測定で得られる結果(弱い値)は決して古典的な意味での測定値としては現れない事だ。例えばハーディのパラドックスにおける量子状態に関する実験結果がそれだ。
         
1992年,英国の物理学者ハーディーが提唱したパラドックスでは(詳細は割愛するが、)2つの干渉計に電子と陽電子を入れるとそれらは量子論に従って干渉を起こす。しかし干渉計をその道中で結合するとどうなるだろうか?
量子力学に従えば電子と陽電子対消滅をしない場合でそれぞれの干渉も起きないという現象が予測されるらしい。つまり果たして電子と陽電子は出会ったのか、それとも出会わなかったのか?。そして弱測定による結論は電子と陽電子の両方が結合部を通らない確率は「マイナス1」になるという結果になるようだ。
しかし、この「マイナス1」は決して(古典的な意味での測定値として)確認する事は出来ない。

次回はもう少しアハラノフの弱い測定(Weak Measurement)について理解したところまで書いてみたいと思う。